校長挨拶

 本校は、昭和38年(1963年)、県内で6番目の工業高等学校としてこの行方の地に開校し、本年で創立62年を迎えました。これまでに、行方市をはじめ、鹿嶋市、石岡市など地域を中心に、多くの優良企業に有能な人材を輩出してまいりました。
 現在、本校では卒業生のおよそ7割が就職の道を選び、近年では県内だけでも1,000件を超える求人票が寄せられております。これは、本校の教育に対する企業の高い信頼と期待の表れであり、ご支援を賜っている企業の皆様には、心より御礼申し上げます。
 さて、現代社会は「VUCA(ブーカ)」の時代と言われています。これは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性) の頭文字を取った言葉であり、将来の予測が困難であることを示しています。急速な技術革新や地政学的リスク、パンデミック、エネルギー問題など、あらゆる要素が絡み合う現代において、変化は加速度的に進み、企業の在り方や働き方も大きく変わりつつあります。
 このような時代において企業が生き残っていくためには、あらゆる課題に柔軟かつ専門的に対応できる「スペシャリスト」の存在が不可欠です。単に知識があるだけでなく、自ら考え、学び、技術を磨き続けることができる力が求められています。こうした時代背景のもと、ものづくりの現場で即戦力として活躍できる工業高校生は、非常に大きな可能性を秘めた存在と言えるでしょう。
 本校では、その可能性を実証するような成果も挙げています。令和6年度に開催された「第24回高校生ものづくりコンテスト全国大会・電気工事部門」において、本校の生徒が見事優勝(厚生労働大臣賞)いたしました。日々の授業や実習、課外での研鑽の積み重ねが、全国の舞台で認められたことは、本校の教育の質の高さを象徴する出来事であり、大きな誇りでもあります。
 生徒たちは、実践的な授業やものづくりをとおして、問題解決能力、観察力、探究心を自然と身に付けています。また、現場で求められる基本的なマナーや責任感、協調性といった「社会人基礎力」も、日々の教育活動を通じて着実に育まれています。若くして専門性と実践力を兼ね備えた人材が育つことこそ、工業高校の大きな利点です。
 本校では、「くくり募集」の制度により、1年次は全員が「工業に関する学科」に入学し、機械・電気・情報技術の3学科の授業を体験します。その後、自らの興味や適性、将来の目標に合わせて2年次に希望する学科を選択し、専門性を深めていきます。
 2・3年次には、各学科の専門知識・技術の修得はもちろんのこと、社会で必要とされる「人間力」の育成にも力を注いでおります。また、資格取得の指導やインターンシップなどを通して、実践的な力や就業意識の向上にも努めております。
 これらの取り組みを計画的かつ継続的に実施することが、変化の激しい社会の中でも価値ある存在として活躍できる人材、すなわち次代を担うスペシャリストの育成につながると確信しています。
 本校は、今後も地域社会と連携しながら、「実践力」と「人間力」を兼ね備えた工業人の育成を目指し、教職員一同、日々努力を重ねてまいります。学校の取り組みや生徒たちの活躍については、本ホームページを通じて随時発信してまいりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。

2025年4月14日
茨城県立玉造工業高等学校長
松代 寛